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zoom RSS 中選挙区制度について整理(111016)

<<   作成日時 : 2011/10/16 18:05   >>

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中選挙区制度について整理

中選挙区制度は、本来は複数人区単一記名制度と呼ぶべき制度ですが、大選挙区制度と小選挙区制度との両方の利点をとった制度、として中選挙区制度と呼ばれるようになりました。しかし、この説明は詭弁であり、 大選挙区と中選挙区について明確な線引きはなく、便宜的区分けでしかありません。こうした詭弁も、大正時代の官僚の理屈ですが、日本では定説と考えている人も多い様です。
複数人区単一記名制度は、衆議院議員選挙では撤廃されましたが、多くの都道府県と市町村議会で採用されています。これら議会を見れば、この選挙制度の傾向を見ることができます。

ここからは敢えて中選挙区制度と標記します。中選挙区制度は、民意が結集した場合に議会に反映させない特徴があります。これについて、選挙結果を参照しましょう。

(事例1)23年4月10日栃木県議会議員選挙足利市(4人区)
1位(自民)早川なおひで氏    13,058票
2位(みん党)つるがいだいすけ氏 11,113票
3位(自民)きむら好文       9,454票
4位(無所属)かとう正一      7,730票←ここまで当選
5位(自民)さいとうともひで    7,639票
6位(自民)杉田つとむ       7,278票
7位(無所属)野村としひこ     5,819票。
当落分岐点は4位のかとう氏の7,730票。問題は100票足らずの差でさいとう氏が5位につけており、同党の候補者で一位の早川氏か、6位の杉田氏の票が100票さいとう氏に動けば当選していました。仮に、早川氏の得票のうち、個人ではなく政党を選択する意図で投票した人が1割いた場合、この人たちが動くことでさいとう氏は当選できていたわけです。
これは自民党支持者にとって、早川氏の多過ぎる得票が死票となっており、議会の議席数に民意が反映していない状況である、と考えられます。

(事例2)21年7月12日東京都議会議員選挙新宿区(4人区)の事例
一昨年の東京都議選・新宿区(4人区)の例。
1位(民主)いのつめまさみ  42,054票
2位(公明)よしくら正美   21,389票
3位(共産)大山とも子    20,870票
4位(自民)吉住健一     18,890票←ここまで当選
5位(自民)秋田一郎     17,183票
6位(無所属)後藤まい     3592票
7位(無所属)鈴木亮介     3,277票
8位(幸福実現)くしだこうすけ  689票。
この選挙では、衆議院選挙に先立ち、自公政権への大きな逆風と民主党の躍進が現れた選挙です。票を見れば一目瞭然で、2位の倍する票数を民主党いのつめ氏が獲得しています。問題は、にもかかわらず、4人区において民主党が1議席しか獲得していない点です。何か明確な政治争点が現れた場合、票数に有権者の民意が現れた場合でも、議席数としては埋没してしまいます。これは逆に言えば、民意が集まれば集まるほどに政治的実現可能性が失われる、という選挙制度における逆進性が存在します。仮に比例代表制ならば、民主2議席、公明と共産が1議席になるでしょう。

以上の通り、民意が議席数に反映しない制度です。これは民主主義では本来あってはならない傾向を示しています。
仮に、特殊事例を選んだのではないか、という反論をお持ちの方もいるかもしれませんので補足しますが、なにかしらの明確な政治争点を元に有権者が投票行動に移る場合、争点を明示した候補者に投票する流れが当然生まれます。問題は、こうした争点を明示しない他者や、多数の支持に反した意見を持つ候補者も同時に当選するため、有権者がいくら政治的意思を選挙に託しても実現の可能性は極めて低くなります。
@民意の実現可能性が低い

また、当落の分岐点 が下がるため、当落するため の支持者の形成を有権者全体から行うより、団体などの政治勢力との関係性を高め、候補者同士で支持団体を差別化した方が、効率良く当選できます。この団体などの政治勢力は、歴史的には集票システムとして「地盤」と呼ばれるようになり、歴史のある政党の基盤となりました。政治家の政治行動は、団体などの政治勢力による支持母体のためだけの政治行動に走る傾向が生まれました。
団体などの政治勢力の意向が反映されやすくなる、ということは、即ち癒着の温床となります。癒着そのものは、選挙制度に限らないものではありますが、当選するための支持基盤として地盤の影響力が高まるため、支持者以外の意見を無視しがちとなり、癒着をより強固なものとします。選挙制度がこれを助長するという点は特記すべきでしょう。 与野党限らず、政治家と特定の団体の関わりが深くなるのはそのためです。
A利権誘導型政治への誘導



中選挙区制度は少数の意見が反映する、という誤解がよく語られますが、小数票で当選する者がすなわち少数意見の代表者であると混同した意見でしかありません。実際に反映すべき少数の意見は議席を獲得できないかもしれませんが、それらは無視してよい、というのであれば民主主義をもう一度勉強すべきでしょう。当選するものは有権者全体の代表であり、当選したものは自分に投票していない側の意見も聞く義務があると、本来は解釈すべきなのです。
中選挙区制度では地盤の意向が常に優先され、その他の少数意見を受容する必要性を特に感じないか、他勢力の当選者と共に無責任に対応するのがオチでしょう。地盤を形成するということは、候補者に当選するための協力を行うかわりに政治的利益を享受することを目的にしています。地盤を形成する側は政治家に対し、自分たち以外の意見を排除あるいは優先順位を落とすように期待します。支持を受ける政治家は当然その要求を優先させます。
中選挙区制度は少数の意見を反映させる制度ではなく、上位いくつかの団体までの意見が、利権という個別政策のレベルで反映するシステムと捉えるのが正しいでしょう。
B少数の意見は反映しない

さて、民意が反映せず、政治的意思を持つべき政治家が支持母体との利益分配に奔走したら、政治的意思を誰が持つのでしょう。それは官僚です。官僚は政策の作成能力を独占し、その中から利権を配分することで与党と利益を享受します。選挙制度には政治家に対し、政治的意思を持つことや実現させることへのモチベーションを与えませんし、当選するための利権を官僚が提供することで利害も一致します。
C官僚政治誘導効果


戦後、自由民主党の台頭も、中身を見れば候補者それぞれに密接な団体が存在し、複数人区で住み分けが図られてきました。それは結果として派閥政治や与野党談合体制を形成します。昨今、民主党批判から派生して中選挙区制度への回帰に言及する声を耳にしますが、問題の本質を見誤っています。これは選挙制度の問題というより、民主党が民意を汲み取るシステムを持たない、政党としての欠陥によるところです。そしてこの問題を是正する方策は、選挙制度を改めることではなく、ダメな候補者、ダメな政党を選挙で落とす、という方がふさわしい。

仮に中選挙区制度に変更した場合、自公政権に戻ったとして、民主党は労働組合という基盤を頼りにある程度議席を保ちます。 その後は以前同様の与野党談合と、支持団体に向けた利権誘導、利権誘導を餌にした官僚政治、という結果に陥ります。この傾向については、多くの事例のうち例外も認められるかもしれませんが、少なくとも戦前の明治政府、戦後の55年体制、全国の都道府県議会と市町村議会はこれら中選挙区制度の傾向をほぼ踏襲していると言っていいでしょう。

小選挙区制度は、政権政党の選択であると同時に、働かない政治家を取捨選択することに意義があります。不支持をつきつけられた議員が特定の利益団体によって当選してしまう中選挙区制度では、やはり民意を反映する制度とは言えません。

中選挙区制度のまとめ
@民意の実現可能性が低い
相容れない選択肢を含め、複数の意見を同時に当選させることによって、有権者自らが選択しない民意と政治を乖離させる制度です。
A利権誘導型政治への誘導
当落の分岐点 が有権者全体の比率から少なくなるため、団体などの政治勢力の票を積み上げることで、安定した選挙戦を行う「地盤」が確立されます。与野党ともに
B少数の意見は反映しない
議席を確保した少数の意見は反映しますが、議席を得ることのできない少数の意見は無視、あるいは排除する傾向を持ちます。これは政治家の顧客が有権者全体ではなく、支持母体でしかないから。
C官僚政治誘導効果
民意が反映しない中、政治家の目的は支持母体のための利権であり、官僚は利権を提供できる限り政治家と利害が一致し、民意に関係なく官僚主導で政策を形成できます。

以上、中選挙区制度とはどのような制度か、ご確認いただければ幸いです。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
中選挙区回帰論が高まる中、中選挙区の問題点を鋭く分析していただき、感心しました。今の与野党の問題と小選挙区制を混同して、制度いじりに走っては、まずいですよね。やはり政権選択、政権交代可能で、ダイナミックな意思決定(決断)が出来る選挙制度が今の日本に求められていますよね。
カゲサン
2012/02/02 11:24
ありがとうございます。
ご賢察のとおりだと思います。

中選挙区制度は巧みに制度を作られていますが、
本質は明治政府による国民統治の手法です。
中選挙区制度も一つの有効なシステムとは思いますが、
民主主義にはぞぐわない。
指摘する学者もいますがメディアが扱わない、
学校教育は誤った見解で選挙制度を教える、
のままでは国民すべてを間違わせます。

1925年に日本は中選挙区制度を導入し、
議会は混乱の中短命政権の連続、
大政翼賛会化、そして敗戦。
日本は論理的に分析せず、
歴史にも学ばず、どうするんでしょうか?
という憤りも含めて上の文を作りました。

コメントいただき心より感謝いたします。
Clap!Rap!Scrap!!
2012/02/03 06:58

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